2011年10月29日土曜日

甲斐駒ヶ岳Aフランケ赤蜘蛛ルート その2

2011年10月10日(月)

間が空きましたが、甲斐駒の赤蜘蛛ルートの続きを...

10月10日は晴れの得意日だという。山をする人達の間では常識らしい。私は去年初めて知った。で、今年もその通りとてもいい天気だった。

七丈小屋から八合目まで登り返し、そこからルート取付までどのくらい歩くのか?トポでは1時間とあるけど前日の下見では半分くらいまで行ってなかったことが後に判明。

4時起床、5時半前にテン場出発。6時前に到着して荷物の整理をして6時20分頃取付へ向けて出発。
下り始めて間もない頃、がさがさっと茂みが動き音がした。すわ、熊か!と思いきや、あれ?こんな時間に一般の登山者の方?てっきり踏み跡とテープを追って下ってきたのだと思い、パートナーも私も「どないしたんですか?」と聞くと実はクライマーだった。すると、彼の後ろのにパートナーの人が現れ、赤蜘蛛を登っていたのですが1日で抜けれず岩小舎でビバークしました、とのこと。そうですか。それでも抜けれたのですね。私達はどうなることやら。少々不安がよぎる。

晩秋の朝 柔らかい日差し
7時半頃、取付に到着する。ここまで長かった。新しい青いお助けロープが随所に張ってあり(帰ってきて分かったことだがこのロープは赤蜘蛛開拓者の井上進さんがNHKの番組のサポート、今年が赤蜘蛛開拓40周年ということなどで新しく張られたものらしい)、とにかくロープをたどって行けばよい。途中2箇所ほど間違うかも知れないところがあるが、1箇所目は左へ行けば八丈沢へ。2箇所目は取付のような森の中、小さい岩小舎の前を左方向へグビッとUターンする、と書いておけばいいでしょうか?説明するの、難しい。ルートファインディングも山屋の使命なのでがんばってください。

さて、取付に到着。あまりの大きな岩壁にほんと圧倒。こんな山深くのこの場所にこんな大きな壁を見つけたものだなぁ、と先輩方のその情熱に脱帽です。

さて、パートナーが1P目リード。ちょうど頭の高さくらいに新しいRCCが打たれていた。白いテープが捲いてあるが赤蜘蛛ルート、とは書いておらずルートファインディングも山屋の使命、と先ほど書いておきながら不安が残る2人。登り出すまでトポ図をにらんでにらんでここやろうと、いうことで登り始める。

ところが。足をちょっとかけてアブミを上がっていく手立てがない。いきなりこれ?なんか難しい。やっぱり私にはまだ早かったんかなぁ、とビレイをしながら考える。すると、RCCの真下に10センチほどの横向きのクラックを挟んで小さめの墓石くらいの岩がある。ここにキャメロットを大小2本セットしてA0でよっこらしょ、とアブミの上段に立ち、2ピン目にヌンチャクをかけた。ここまでくればこっちのもの。あとは慎重にでもすいすいと登って行って1Pを終了した。

さて、お次は私の番。西側に面している為、お日様が当たらず体が結構冷えてしまった。ぎこちない動きでよっとアブミに乗っかるがどうしてもバランス悪く先に進めない。セカンドやのにここでこんなもたついてたら、と思い、思い切って先ほどのキャメロットをぐっとつかんでアブミの上段に行こうとしたその時。

ガガッ!

え?岩がお、ち、た。スローモーションで私の左足すれすれを岩が落ちていく...それでも一瞬頭の中は「?」
はっと我に返りアブミに乗っかったまま下を見るとやや砂埃を上げて大きな岩がゆっくり転がっている。「な、なに〜?」と目の前を見るとそっくりそのまま先ほどまであった岩の部分がない。と、同時に岩は止まることなく赤石沢に消えた。

ガガーーン!!ガガガガーーーン!パンッ!ガツッ!ゴーーーーーォォン!!

とものすごい音を発しながら砕けていった。

後には、小さなキャメがぽとりと落ちていたが大きなキャメがない!一緒に落ちたか!と思ってふと手を見ると、左手にしっかりと握っていた。急に震えが来てアブミを下りてその場にしゃがみ込んでしまった...

← この写真の四角で囲った部分が落ちました。平面四角で描いてますが、奥行きをよく見て頂ければ、どれだけの大きさの岩が落ちたか分かって頂けるかと思います。よく見ると、奥の方の下の辺りだけでつながっていたようです。

*****

で、しゃがみ混んでしまったけれど登らずにしてなんとする、と思い気を取り直して再度登ろうとするも、やっぱりなんだか気持ちがついてこなくてアブミでぶら下がるだけ。帰りたい、と言ってしまいたくなったけれど、あかん、あかん、ここまでせっかく来てんから、とがんばったが、結局自力で2ピン目に届かず、相方に下りてきてもらってお助けスリングをかけてもらった。そこからはなんとかすいすい登り1P終了。

このあと2ピッチ目をリードし、3ピッチ目をパートナーが。4P目(V字ハング)は私なのに、どうしても気持ちが乗ってこないので代わってもらった。気持ちに余裕があったら天気も最高やしもんのすごく楽しめるのに、と思いつつ自分の気の弱さを恨めしく思う。岩が落ちたくらいなんや!と叱咤する自分もいるが、今日は弱い...

4P目が終わり大テラス。見上げる上にはものすごい垂直の壁が。そこに1本すーっとゆるい曲線を描きながら走っているクラックが。スーパークラックだ。おぉ、あれがスーパークラックか。しかしここですでにお昼は過ぎ、個人的に決めていた、この大テラスに正午までに到着する、というタイムリミットはとっくに過ぎ去っていた。

やはり怖い。フォローで登るにしても、怖い。ありえないこととは分かっているが、あのスーパークラックからこっちが割れて崩壊したらどうなるか、とかもぉネガティブ1000%なことしか頭に浮かばない。パートナーには申し訳ないが、時間のことなど色々と考えて大テラスまで、としてもらってここから懸垂して取付まで下りた。

下りてアプローチ道を登り返し、この日も17時半頃テントに戻った。

反省 気持ちが弱い。弱すぎる...

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