2017年10月13日金曜日

The 錦秋 〜飯豊山(2105.1m)〜

2017年10月8日(日)〜10日(火)

ファミリー山行で、秋の3連休を使って山形県と福島県の県境にある飯豊山に行ってきました。(新潟県にもかかっている稜線もあります)父ちゃんの百名山踏破計画のひとつです。
飯豊山は、登山口があちらこちらにあるのですが、今回は、関西−山形の往復に2日かかるので、1日で頂上へ行って下山できる最短距離のコースを選びました。それが山形県西置賜郡飯豊町にある大日杉小屋からのコース。とはいえ、コースタイムは13時間。通常はみなさん、山中1泊で計画されるようですが、繰り返しますが1日しか登山の時間が取れないので13時間という長時間歩行が一番短いコースというなんとも矛盾してるような内容の登山でした。

登山口に到着した日の夜は、登山口にある大日杉小屋泊。大人1人1500円。食事の用意はないので各自で準備しなくてはなりません。レトルトのおでんで到着祝いの軽い宴会をして早々に就寝。

9日の朝。日の出にはまだ遠い朝4時前出発。もちろんヘッドランプ歩行(最近多い)。途中、がさがさと草むらに「何か」いた様子で慌ててラジオをつけたものの、一番電波のいいNHK(AM)は「ラジオ深夜便」の時間。がやがやした音を所望していたのですが。クマ避けになっていたかどうか...。

東北の山なので寒いのかなぁ思いきや、ルートの半分近くは暑く半袖でもOKでした。が、飯豊本山(*)への稜線に出た途端、雲の中に突入し強風が吹き、2000m弱の標高といえども気温と天気はがらりと変わったのでした。この時期の登山の装備は暑さと寒さの両方に対しての備えを万全に。

休憩時間を入れてほぼコースタイム通りに下山できてよかったですが疲れた。今回は、登山の内容よりも予期せずすごい景色に出会えました。

夜明け前には、この季節ならではの雲海が眼下に広がり...


植林のない自然林の黄葉と紅葉が目の前に広がり...

鮮やかな木々の紅葉に興奮しました

残念ながら、本山手前でこんな感じで頂上からの眺めはなかったのですが。

本当によかったです。きれいでした。「錦秋」という言葉がこれほど当てはまる紅葉は人生で見たことがありませんでした。飯豊山の紅葉は「The 錦秋」だと思いました。植林のない山がこんなにいいものだとは実際に見るまで思ってもみませんでした。

一足お先に紅葉狩りをしてきた3連休でした。しかし東北は遠かった。車の運転も片道丸1日かかりました。

*「飯豊山」という山はなく、今回登った本山が飯豊山の本峰と呼ばれる頂上で本山から20分ほど南側に飯豊神社、すぐ横に本山小屋があります。一番高い地点は、本山の西側にある大日岳で2128m。

2017年10月2日月曜日

丸山東壁 緑ルート登攀 その1

2017年9月23日(土)〜25日(月)

ずっと気になっていたけど、多分登ることないかなぁ、と長年思っていた丸山東壁・緑ルートへ行ってきました。
23日の天気は、少々雨上がりが遅れ、扇沢からトロリーバスに乗って黒部ダムに到着した時も小雨がぱらついてましたが雨具を着るほどでもなくそのまま出発。山深い場所ですが、アプローチは1時間半くらいという近さ。

黒部ダムの放流を見ながら(放水によって霧雨になるというのが、距離あるのにすごい水圧なんだなと改めて感じる)内蔵助谷出合にむかって水平道を歩きます。土曜日ということで数人は同じ方向へ進んだようですが、クライマーの姿はなく...。

丸山東壁通称丸東の緑ルートは今時の若い人はあんまり登らないだろうなぁというアブミルート。なのでそんなに人もいないだろう、と思っていたら実は、1泊2日でホテル丸山泊まりのパーティがいらっしゃいました。

テン場は出合から思いの外すぐの場所にあり、重たい荷物を下ろして早速テント設営。その後は、水を取りに行き翌日登るアプローチ道を偵察に。沢には釣りをする人が結構いて、これまた驚き。8年前に水平道から日電歩道を歩いた時には、そんなに釣りをする人に会った記憶がない。

一ルンゼを詰めていきます。目の前に早速、丸東が見えますが、一ルンゼを上部まで詰めてしまうと、南東稜の取付へ着いてしまいます。緑ルートの取付へは、途中から藪漕ぎ(あぁ、再び!)です。

取付への道を探し出し、到着すると3人パーティが登ってました。リーダーの人は、同じ山岳会の人のご主人で、この日は別の山岳会で登りに来ていたが、近々こちらの会に移籍されるとのことでした。翌日、登攀途中に壁ですれ違いお話しました。

取付を確認しテン場へ戻ると、あら、珍しいお客様。というか私らがお客さんか。クワガタの雌です。こんなん見るのほんまに半世紀ぶりくらいです。

さて、昼からは時間があるので早速宴会開始。夜ご飯を食べたら6時半には就寝。翌日は3時起きです。

予定通り3時に起き5時に出発。6時半には取り付いておりました。12時間後、明るいうちに再びこの取付地点に戻っていることを考えて...。

2P目をフォローするハズ。小さいですね〜。取付の台地がすでに見えなくなっています。壁は寝ているので登りやすいです。苦手なアブミの一段目に立つこと、ほとんどなくアブミの掛け替えで高度を稼ぎます。

3P目には、下部壁の核心である三日月ハングが。ハング越えはすべてハズに任せました。その代わり、ぐいぐい登れる私担当のピッチは高速モードで時間を稼ぎました。

三日月ハングを越えたところでハンギンビレイ。これ、結構腰が痛い。私もがんばってフォローしてます。小さいオレンジの点が私です。取付は、写真の真ん中よりやや上、壁際にちょん、と見える白いところです。高いところにおるわ〜!

さっきと変わってへんやん、と言われそうですが、先ほどの写真よりも約100m進みました。ここのピッチ切りをちょっとミスって時間のロスが生じたのが反省点です。

この後、意外と悪い草付きを登り中央バンドに到着です。1本休憩を入れて、いよいよ上部の大ハング、このルート核心部にトライです。

上部岩壁登攀はこちら




丸山東壁 緑ルート登攀 その2

2017年9月23日(土)〜25日(月)

下部ルートはこちら

上部ルート登攀開始。1P目は空中スタート。うまくアブミに立てずにぐるぐる回る私。中島みゆきの「時代」のサビの部分が頭の中に流れます。あぁ、やめて〜!
なんとか立ちあがり、その後はボルトラダーを時間を稼ぐため超特急で登ります。大ハングの下でピッチを切ります。時間が気になる。日暮れに間に合うか?


大ハングを越えるハズ。おぉ、飛んでるように見える。私は越えられるんだろうか?不安がよぎるがここまできたらそんなことを言ってる場合ではない。なにがなんでもこのピッチを登ってハズに合流しなくては2人とも地面に下り立つことはできないのだ。

そして登り始めた。ハング越えが2箇所。足元にはなぁんにもない。上部ルート1P目の取付は40mほど下。そのさらに数百メートル下には、このルートを登り始めた森が見えますが、怖くてあんまり下を見れない。というか怖くなるので下は見ないようにして、手元のアブミ操作に集中する。が、やはりハングの下でまたくるくる回る。なんで回るのぉ〜?また中島みゆきが歌い出した。時代は回ってないよ〜。私が回ってるのぉ〜。

日暮れが近づく。ガスが湧き出し辺りは薄暗くなり始めた。なんとか6時前に終了した。記念&記録のために写真を撮り、懸垂下降に取りかかる。怖いけど、立ち位置的に私が先に下りた方がいいので先に下りる。いきなりの空中懸垂。そしてまた...回る。くるくるくる〜。あぁ、目をつむってロープを操作する。半分すぎると壁に足がつくようになり回転もしなくなり無事着地。次にハズが下りて来たが、初めてハズが「こえ〜〜〜!」というのを聞いた。「クルクル回って止まる時、壁と反対側、谷の方を向いて回転が止まんねん。おぉ、こえ〜!!」としゃべりながら笑っているが、辺りはどんどん暗くなる。
暗くなるのも焦るが、さらに焦る理由が...。荷物をデポしたのはいいが25m離れた場所に置いてきた。ヘッドランプも...。この時点でようやく手元が分かる暗さ。互いの顔はほとんど分からない。ピンチだ!どうしよう。どうやって荷物まで戻ろうか?あ、そうだ!カメラがあった!カメラをプレビューモードにしてその明るさを頼りにハズが荷物まで戻る。
とはいえ、このバンドのトラバースが悪い。草付き、濡れてる、クライミングシューズ。滑って落ちたら...。
無事、ザックまで戻り私のヘッドランプを持って戻ってきてくれ、そしてまた荷物の場所まで戻って私をビレイする、という三度手間かけてしまい時間があっという間に過ぎていった。
暗くなっての行動は危険が増すが、ホテル丸山に泊まる気はさらさらなく、落ち着いて行こう、とヘッドランプをつけての夜間懸垂を開始。2人とも初めての経験。

そして再び大ピンチ!下降1P目終了点でロープを回収しようとひっぱるが、ロープが流れない!ロープの流れを確認してから私が下りるはずだったが、どうもこうも動かないので業を煮やして下りてみた。ところがロープはどこにもひっかかっていないし干渉もしていないし、もちろん直線に流れている。なのに全く下りてこない。
わずか5センチほどの幅のスタンスに2人で立って必死でロープをひっぱる。これ以上にないくらいロープが伸びて(ぶちっ!て切れるんちゃうか、と思うほど伸びた)やっと3センチほどが下りてくる、という状態。怪奇現象じゃないが、なんか得体の知れないもんが上でロープを押さえつけてるんちゃうか?と思うほどロープが流れない。
うわぁ、こんなところで立ったままビバーク?どっしゃ〜!と思いつつロープを引っ張る。後で聞くとこの時、ハズの頭には「絶対絶命」という文字が浮かんでいたらしい。確かにこの時ほどこの言葉がぴったりなシチュエーションはこれまでの人生でなかった。

どのくらい時間が過ぎたか、なんとかロープを回収し懸垂を続ける。ここからは安心の懸垂ステーションだが、なんせ暗いので次のステーションが分かりにくい。ようよう登り2P目の終了点まで順調に下りて来た。あぁ、地面はもうすぐ!と思っていたら、三度ピンチ(やれやれ)。あと1ピッチの懸垂やのに50mではロープが足らず(あと5m!でも落ちたらやばい5m!)登り返す。また時間を食ってしまった。
というようなことが続きながらも真っ暗闇の中、地面に下り立ったのが(↑)夜の9時半。良い子は寝てる時間だ。テン場に戻ったのが11時。疲れていたけど内蔵助谷で足や顔を洗ってさっぱりリフレッシュ。川の水が冷たいのなんのって。さすが黒部!食欲はないけれど、なんとなくお酒は飲みたいと行動食の残りをつまみにささやかな祝杯を上げて就寝。
自分の寝言で目を覚ますこともあったが(確か、下りていいの?!とか言うてたと思う)安心安全の地上で朝まで寝た。

翌日帰阪。快晴。立山の上部は紅葉が始まっていてきれいだった。ヒヤリハット満載の登攀でしたが2人ともよくがんばったと思う。
しかし、一生分のアブミの掛け替えをしたなぁ。もぉあれだけのアブミルートは行かんだろうなぁ。