2012年9月12日水曜日

マッターホルンヘルンリ稜登攀

2012年8月16日(木) 雨(街)、曇のち晴(山)
マッターホルン、ヘルンリ小屋まで。

6:00 起床
9:30 ロープウェイ
10:00 シュワルツゼー出発
12:30 ヘルンリ小屋
13:00-15:30 ルートの下見
16:00 小屋チェックイン
19:00 夕食
20:30 就寝

朝起きてアパートのベランダから空をみるとやや雲がかかっているも、いつもあっという間に雲がなくなるのでこの日もそうだろうと思い、朝ご飯を食べたりして準備をする。

この日はいよいよ、翌日の登頂目指してベースとなるヘルンリ小屋まで上がる。上がるといってもそないに大げさではなくてロープウェイに乗り、2時間ほどハイキングするだけの話だ。着いたらその後はルートの偵察に行く予定。

8時過ぎに準備が終わったので出発しようとすると相方が雨が落ちてきてます、という。ベランダに出るとぽつりぽつりと雨が。えぇ〜、雨かいな!小降りやから待っとこうか、と思っているうちに本降りになってきた。
上の状況が気になるので、とりあえず観光センターと山岳センターに天気予報をチェックしに行こう、と8時半過ぎにアパートを出る。

観光センターはすでに開いててタブレット端末で予報を調べると、向こう3日は晴れ。山岳センターや知り合い、自身の経験から3日向こうまでの天気はほぼ当たる。が、この日は外れた。しかし、向こう3日は晴れの予報。でもこの日は外れたのでその確率に悩む。次に山岳センターに向かう。数分歩く間にも降る雨は多くなっている。
山岳センターは9時オープン。10分ほどセンター前の軒下で待つ。その間にも本降りになってくる。私たちの他にも、山岳ガイドらしき人やどこぞを登る感じのエキスパートな感じの人達が待っている。

9時ちょうどに開き、2階に上がりカウンターの人に聞く。
「今は雨降ってるけど、大丈夫。今日の昼からは晴れ上がるわ!向こう3日、土曜日まですっきり晴れよ!」と自信満々に言う女性。ここまで自信満々に言われると「えぇ、今、雨降ってんのに?」と聞き返す度胸はない。

半信半疑だがとりあえずシュワルツゼーまで行くことにした。相方はロープウェイのチケット売り場の人に上の様子を聞いていた。「雨降ってるみたいよ。でも昼からは晴れるって予報では言ってるけど私には分からないわ。」そらそーだろう。とりあえず、上まで行くことにした。

ロープウェイに乗って上がるにつれて雨がひどくなる。ロープウェイの速度で雨がひどいように思うのだろうが、それを差し引いても街より降っているのはたしか...。

シュワルツゼーに到着すると、誰もいない。マッターホルングレーシャーパラダイスに行く家族連れが間違えて下りてしまったくらいで、他には誰もいない。そして景色はガスの中...。

あーだこーだと相方と話をしたが結局小屋まで行くことにした。雨具を着て出発する。
途中で数パーティとすれ違ったので今日、登ったのかどうか聞くと上は曇りでルートが分からず途中まで行って引き返したきた、とのこと。ガイドはこんなのへっちゃらさ、と言って登って行ったけどね、と教えてくれた。

気分はダウン。うぅん、上はガスだが、歩いていると髪の毛が濡れてくるくらいのガス。岩が濡れた状態なら登りたくない。小屋までのハイキング道を行くのは私たち2人と親子1組、単独の若い男性1人だけ。途中で(おそらく留学か現地で仕事をしているだろう)日本人の女性に出会いちょこっと話をする。2人でマッターホルンに登る、というと「素敵!」と言われた。素敵...かなぁ。無事頂上に着けたら、やけどなぁ、と思い別れる。

12時過ぎに小屋に着く。小屋外のトイレに行くのに小屋の裏側に回りこむと、一昨日行ったオーバーガーベルホルン方向の山々が太陽の光を浴びて見えるではないか!おぉ!天気は回復傾向だ!るんるん気分で用を足し相方に伝えるべく小屋のテラスに向かう。

休憩をし、下見に向かうべく準備。

テン場には数張りのテントが張ってあった。日本のものと違い軍隊のような深緑色のテントが多かった。しかも重そうだった。

取付に向かうとちょうど2人パーティと3人パーティが下りてきていた。3人パーティの背の高い若い男性に話しかけてみた。そしたら...頂上まであと1ピッチだったけど、時間切れで下りてきた、とのこと。朝は曇っていたのもあり、かなり道が分かりづらく、ガイドにも「そんなところでなにしてるんや!さっさとこっちへ戻ってこい!」と言われた、などと話してくれた。男性曰く「とにかく、踏み跡がなくなったりガレ、ザレが多くなったらそれはルートから外れていると言うことだからすぐに戻った方がいい。」と。もっかい行くの?と聞くと「今んところはなんとも言えね〜。テントに戻って考えるよ。」とのことだった。

ここからは多くのウェブサイトやブログサイトで記録が載っているのではしょりたいと思います。が、下見を行ったものの、やはり自分好みのルートを選んでしまうんですね〜。もちろん、そちら方面にも踏み跡があるもんですから。結構切れ落ちた稜線で、行く先には杭があって支点が取れるもんですから行くべきかどうするべきか考えていると、ちょうど下りてきた人達がいて、話しかけると「そこはルートちゃうぞ〜。こっちやで〜。でも、ともかくちょっとわしらが下を通過するまでそこにおってくれへんか?君がいるところは浮き石が多いから落とされたらかなんからなぁ。」と言われた。
うぅん、小屋から少し上がったくらいですでにルートが難しいっていうか、間違えやすい...。少々不安がよぎる。

上を見上げるとまた違うパーティが下りてきた。そのルートをしっかり頭にたたき込む。で、とりあえず今いる場所からは下りた。すると、スペインチーム、ポーランドチーム、あともう1パーティが下見に来ていた。スペインチームの数人が私がいた同じところを上がろうとするので、「ちゃうで、そこ。私もさっき、そこ上がっていってん。面白そうなルートやろ?すやけどちゃうねん。そこちゃうでって下りてきた人に言われてん。正規のルートはな、あそこをぐるっと回りこんで...」と説明してあげた。
そこからは私達は、それぞれのチームが行くのを半時間ほど見ていた。

15時半過ぎに下りて小屋にチェックイン。そしたらガイドレスで登ると言ったらパスポートを出せ、と言われて下りてきたら返すからね、と人質に取られてしまった。不安が残る...。

そして次の日。いよいよ頂上を目指す日となった。


← ガスで展望がまったくない状態のハイキング道をヘルンリ小屋まで歩く。












←小屋の裏に回ると晴れ間が広がる。北壁の取付に向かうクレバス帯














下見で登るスペインチームの人達
小屋前からモンテローザ方面
夕焼けに輝く山々が何とも言えないくらい美しい





マッターホルン 写真右側を登って
行くのがヘルンリ稜

2012年9月8日土曜日

マッターホルン登攀 その5

2012年8月15日(水) 晴
4日目 ブライトホルン、再び

5時に起き軽くご飯を食べ6時過ぎにアパートを出てロープウェイ駅に向う。天気がよくマッターホルンの先が朝日に照らされ赤く燃えていた。こんな山が見れるとは、と興奮気味だったが写真を撮り終わると顔が引きつっていることに気が付いた。自分でも分るくらいに引きつっている。この日の順応にも失敗したらどうしよう、その時は相方をどうするか?色々と考える。

この日は相方に先に行ってもらうことにした。コースタイム通りの時間で歩いてもらう。先日はコースタイムの半分の時間で頂上まで行って往復してしまったので今回はゆっくり行くことにする。

2日前と同じ様にこの日の朝も中高生達で混んでいた。2日前にもいた子を見たので1週間程滞在しているんだろう。だとしたらよほど裕福な家の子達なんだろな。

それはともかく。今までにない緊張感を感じながらロープウェイに乗り、マッターホルングレーシャーパラダイスのあるクラインホルンまで上がる。

2日前と同じ様にロープとアイゼンをすぐに着け歩き出す。「ゆっくり、ゆっくり...。」自分に言い聞かせる様にして歩く。

斜面の基部で休憩する。ここからが核心。ゆっくり、ゆっくり登って行く。片道1時間弱かけて頂上に到着。調子はすこぶるいい。が、ここを下りてからが問題となる。10分ほど休憩してこの日は登りと同じルートを下る。
晴れているが、雲が湧くのが2日前より早い。斜面と反対側に広がる雪原の向こうには、山ごと飲み込みそうな大きな雲がゆっくり動いている。日に日に天気が悪い方向へ向かっていることを感じる。山岳センターの人が言っていた、金曜は天気が悪くなるという言葉を思い出す。

マッターホルンにも雲がかかっている。とはいえ、今日も沢山の人が登っているんだろうなぁ。

下りもコースタイム通りゆっくり下る。ロープウェイ駅のトンネルでギアを外して町に戻る準備。この日はここまで戻って来ても頭痛がまったくない!おぉ、かなりいい感じ!食欲も多少あるが戻すのが怖いので行動食をそぉっと、少しづつ口に入れる。

この日は帰りもスキー合宿の子達と一緒になったのでロープウェイに乗るのに二巡待ち。でも標高の高い所にいればいる程いいので気長に待つ。

この日も一度乗り換えただけでツェルマットの街までノンストップで下りて行く。上がりは2回の乗り継ぎがあるのに。今、乗っているラインが朝と同じラインなのか違うのか、相方と2人、どうしても理解できない。ま、ええか。

そしてこの日は観光客も多くいた。インド系の人が多く、現地に住んでいるのかインドからの観光なのか分らないが日本にはない景気のよさを感じた。

ツェルマットまで下りてきた。頭痛は...なし!吐き気もなし!食欲あり!ということで順応成功。よかった。

いよいよ次の日に上がって2日後には頂上を目指す。2日後、頂上から下りてアパートに戻る時間が分らないので「登頂祝杯用」にビール、ワイン、チーズ、パン、生ハム、野菜などを買いに行く。その前に観光センターに寄って天気予報を確認する。土曜日まで晴れマークが並ぶ。これで、予定通り挑戦することが決まった。


← 前日にはこのオーバーガーベルホルンの山々が間近に見えるところまでハイキングに行っていたのだ。

ちょうど写真右下に見えるツェルマットの街の辺りから伸びている谷間を歩いていったのだけど。ちょっと小さい過ぎて分かりにくいかな。

2012年9月7日金曜日

マッターホルンヘルンリ稜登攀 その4


2012年8月14日(火) 晴れ
4日目 トリフトヒュッテハイキング

前日、夕食時には頭痛もほとんど消え、ご飯を食べれた。そして今後のことを話し合った。私としてはやはり最初に決めた計画通り、もう一度初めからなぞることを提案。
最初の計画  月曜 ハイキング
火曜 ブライトホルン 高度順応
水曜 ヘルンリ小屋まで
木曜 頂上狙い
金曜 予備日
土曜 予備日
日曜 移動日

こうなると、もう一度ブライトホルンに登らなくてはならない。というのもツェルマット周辺で比較的アプローチが容易で私が知ってる4000mというのがブライトホルンだからだ。
それに、私は必要であれば、その目的にかなっていれば、同じ山に登ることは別に苦にならない。一度登ったからもぉいいや、っていうのは、私個人あまり思わないのである。ま、今回は順応に失敗したからもっかい登らなくてはならないのだが。
が、相方は少々違う。一度登ったところにはあまり登りたくない、という感じ。気持ちは分かる。が、今回はもう一度登っていただかなくてはいけない。話をするが、彼女はどうも乗り気でない様子。

で、心理作戦に出た。おそらく私がここで元々の計画を「なぞる」ことに固執しブライトホルンに再度登ることを強く主張したら彼女は余計に違うところを登りたい、と主張するだろう。なので、さらりと3000m後半の高さの山の名前を2つほど言う。色々と彼女なりに考えている様子だがとりあえずそのうちの1つに決めた。ただ、それで高度順応になるのかどうか?彼女としても疑問があるようだ。私としては、まぁ、4000m以上に登りたいけれど、昨日はしんどかったけど一旦は登っているので、とりあえずどこかに登ったらなんとかなるかな。でもやっぱり4000mは越えておきたい、という考え。

しばらくして、彼女が言い出した。やっぱりブライトホルンに行きましょう、と。成功である。やはりここは3000m後半よりは4000m以上の山に登っている方が高度順応になる。

ということで、この日はハイキングで足慣らし、15日(水)はもう一度ブライトホルン、そして木曜と金曜でマッターホルンに挑戦する、ということになった。

この日はツェルマットからトリフトヒュッテを往復するルート。彼女の山岳会の方から借りたハイキングルート集に載っていたルートで、往復4時間と歩きごたえがあり、高度もそこそこ上がるコース。

朝は少し曇っていたがみるみる間に晴れていい天気に。
ルート本によると歩く日本人は少ないが現地のハイカーには人気の、お花がいっぱいのルートということである。ツェルマット北側の切り立った崖の上に立つエーデルワイスヒュッテ(借りていたアパートのベランダから正面上に見える)を通り、トリフト川沿いをトリフトヒュッテまで登る道だ。

ツェルマットの街の真ん中辺りから急坂を登り始めると老夫婦が数組歩いている。抜かして先を行く。民家やホテルの間を抜けると目の前に突然広がる草原。うわ、すごい。一気にアルプスの世界だ。そしてお花が咲いている。心が和む。

分岐で立派な道しるべが立つ。簡単に行き先と距離、所要時間が英語で書いている。まずはエーデルワイスヒュッテまで。アパートのベランダから見ているとどこをどうやって登って行くのか不思議だったが、そんなに急でもない普通の山道がついている。途中で岩登りの練習岩場があった。ペツルもちゃんと設置されていてギアがあったら登ってみたいなぁ。

そんな話をしながら進んでいくとエーデルワイスヒュッテに到着。
先ほど抜かした老夫婦は、岩場のところで追い越されすでのヒュッテのテラスの一番街側となる奥のテーブルに座って何か注文していた。ツェルマットのこじんまりとした街を眼下に見てのコーヒーとケーキもおいしいだろうなぁ。

ここからは一本道。道が続く通りに行けば迷うことはない。急な登りではないけれど結構歩きごたえのある道が続く。先を歩いていた若い女性2人に追いつく。右手の斜面から流れ出る小川の水を口に含んだりして、1人はすこしバテ気味だ。

10時15分頃、トリフトヒュッテに到着する。裏手は広がる草原。その奥にガーベルホルン氷河が見える。氷河の奥にそびえるガーベルホルンなどの山々。時々雲がかかってピークが見え隠れするがかっこいい山だ。

先ほどの2人の女性は、先に到着して草むら横に座って休憩していた2人と合流した。どうやら仲間のようだ。ちょっと休憩すると4人で小屋の北側の斜めに上がるルートに向かって歩き出した。ルートの先は斜面の上で向こう側につながっているようだ。どこに行くんだろう?

小屋の正面には昨日登ってたたきのめされたブライトホルンからゴルナーグラード方面の稜線が見える。綺麗やなぁ。大きいなぁ。広いなぁ。

20分ほど小屋の前でゆっくりして登ってきたルートを下りることにする。すると、登ってくる人が続々。あら、静かな山道と思っていたら結構登ってくる人達がいるんだぁ。

下り始めようとすると、ガイドさんかな?小屋の人かな?が話しかけてきてくれて、先ほど4人が進んだあの斜面のルートを行くとマッターホルンを正面に見ながら歩けるルートがあるよ。行ってみたら?あと、プラス5時間位でぐるぅっと歩いてツェルマットに下りることができるよ、と教えてくれた。おぉ、なんだか魅力的なそそられるルートだわ。でも、そのコースはガイドブックには載っていなかったのでここまでの往復分の水と行動食しか持っていなかったので、ありがとう、とだけ言って下り始めた。

途中でアイゼン、ロープ、冬靴を担いで登ってくる体躯のいい男性達何人もとすれ違う。どこに行くんだろう?トリフトヒュッテから奥のガーベルホルンの方へ行くのかな?どこ行くの?と聞いてみたいけれど、特に目が合うわけでもなく挨拶もないので聞きそびれた。

この日は無事、ハイキング終了。立てた計画を1つ1つこなすという行程がやっぱり安心するし楽しめる。

エーデルワイスヒュッテの前に植わっていたエーデルワイス。帰国してから知ったが、最近は自生のものが少なくなっているらしい。
そういえば、道端ではほとんど見なかった。


















2012年9月3日月曜日

マッターホルン登山その3

2012年8月13日(月) 晴れ
3日目 ブライトホルン(4164m)

朝5時頃起床
6時前アパート出発
6時20分頃 ロープウェイに乗る
8時前 マッターホルングレイシャーパラダイス(M.G.P.)到着
8時10分頃 歩き開始
9時40分頃 ブライトホルン頂上
11時30分頃 M.G.P.
12時過ぎ ツェルマット帰着

あまり良く眠れなかったので時間になるとすぐに起きる。どうもイライラしている。相方に八つ当たりをする。あかんなぁ、と思いつつ、どうも納得しない。けど、また計画を変えるのはどうしても気にくわないので、ブライトホルンに向かう。

6時前にアパートを出る。まだ少し薄暗い。犬の散歩をしてる人もちらほらいるがまだ街はひっそりしている。そんな中、ツェルマットのロープウェイ駅に着くと、中学、高校生くらいの子達がわんさか。ここだけえらくにぎやかだ。どうやらスキーの夏合宿みたいなのに来てるらしい。ユニフォームを見ているとスイスはもちろん、Germany(ドイツ)とかU.S.A.(アメリカ)のジャージを着てる子もいたようだ。

6時半始発だがこの大人数の為、15分ほど早めにロープウェイが稼働し始めた。この子達はパスを持っているのだろう。チケット売り場は素通りでどんどん乗っていく。するとチケット売り場も1つだけ開けてくれた。往復のロープウェイ料金、49.50CHF。先日書いた、セーバーフレキシーパスを持っているので半額のこの値段。助かる。

ロープウェイに乗り込み、2階乗り継いでM.G.P.へ到着。すでに3884メートル。多くのホームページやブログにも書かれているようにすでに富士山より高い。数字をみただけでくらくらする(ような気がする)。ロープウェイを下りるとひんやりとした冷たい100mほどのトンネルを歩いて抜け、雪原に出る。トイレは、雪原に出る手前にお土産屋さん&レストランがあるのでここのを使わせてもらう。

雪原に出ると、先行した学生達が遠くのゲレンデを滑っている。夏でもこれだけ滑ることができる環境ならそらウィンタースポーツ、強いわなぁ、と感心する。

ちょっと歩くと雪が固められていて滑りそうなので凍ってはいないがアイゼンを付ける。練習と言うことでロープもつなぐ。つないでから私が先に行く。

たくさんの人が登っている。雪原をロープをつないで歩いて行く人達。トレースはしっかりついているが、クレバスだけは気をつけなくては。天気もよい。

歩き出して平らな雪原を歩く。すでに気温が高いのが雪がくさってきている。

頂上へ続く斜面の基部へ来た。ここでアイゼンをつける人もいた。コース資料ではここでアイゼンをつける、とある。トレースを見ていると、少し登ってから左上にトラバース気味に進むコースと、右手に行き、そこからどうなるか、今立っているところからは見えないコースの2つがある。左上トラバースルートを行くパーティが多い。コース資料でもこちらの方が多い、と書いてあったのでこちらを行くことにする。

登り始めてすぐ、ゆっくりゆっくり歩くガイド登山のパーティがいた。後をついていこうか、とちらりと思ったが、抜かすことにした。ちょっとペースが早いなぁ、と思っていたが調子がよかったのでそのままのスピードで上がっていった。

次に6人ほどのパーティがいた。うちの1人がガイドに「あとどのくらい?」と聞いている。そうか、この傾斜を見ていてあとどのくらいで頂上なのか、なんとなくでも分からないのか。だけどガイドに頼めば、山頂には連れて行ってくれる。けど、それは自分で地図読みをするとかしないとか、それがいいとか悪いとかじゃなくて、こうしてガイドを頼んで山を登るのがこちらでは普通の山行形態の1つなんだな、と納得する。

この6人パーティも抜かしてしまい、頂上へ到着。
この時は普通に調子良く、写真を撮ったり行動食を食べたりして20分程山頂で過ごす。

帰りは、登ってきたトーレスと反対側のトレースとたどることにした。先ほど、傾斜の基部から見た、右手に行っていたルートだ。

少し歩き出すと、人幅くらいでトレースがある。おぉ!両端は切れ落ちている。右手は先ほどの基部へつづく斜面。しかし落ちてしまえば止まることなく行き着くところまで行ってしまうだろう。この下には確か、顕著なクレバスはなかったが落ちた弾みの衝撃でひょっとして雪面に穴が開くかも知れないので注意しなくては。
左手側は、すっぱり、これまたすっきりいさぎよく切れ落ちている。こちらは落ちたらいつどこで止まるのか、検討つかない。はるか下の方にツェルマットの街が見えている。行くわけないけど、あの辺まで転げ落ちて行ってしまいそうだ。

適度に緊張しながらこの細いトレースを進む。ずっと先には一度下り、そして再度上がっているトレースを歩くパーティが見える。好天気の下、4000mの山を楽しめる環境をうらやましく思う。

切れ落ちた尾根が終わったところから広い斜面を走るように基部まで下りる。そして、M.G.P.まで歩いて行く。この辺りから少々頭痛が始まった。

ヤバいなぁ...。

M.G.P.に着く頃には頭痛がひどくなってきた。がーん、がーん。まるで二日酔いだ。いつもそうだ。高山病の頭痛は二日酔いだ。何もいらない。食べたくないし飲みたくない。目をつぶってもくらくらするし、目を開けていても目が回るようでとにかく気分が悪い。

先ほどのトンネルで装備を外し、ザックに入れロープウェイに乗る。帰りは、ツェルマットの駅まで乗換なしの一直線。これにはかなり助けれらた。途中の乗換駅で待つ間、耐えられるかどうか不安だったからだ。ツェルマットの少し上の村、ツム・ゼーを通る頃には2人共、調子悪くロープウェイの箱の中でぐったり。

ツェルマットの駅についてとうとうしんどさ最悪に達する。ぎりぎりまで持たせてトイレに駆け込む。そして朝食から行動食、ここまで胃に入れたものを全て戻してしまった。

戻した後、胃はすっきりしたが頭痛がひどい。がんがん、頭を殴られ続けているようだ。なんとかアパートに帰り着きベッドに横になる。相方は先ほどまで少々辛かったようだが、回復している様子。

1時間ほど寝て、なんとか起きれそうだったので天気予報を見に山岳センターと観光案内所に行く。観光案内所にはタブレット式端末が自由に使えるように置いてあるので(ドイツ語と英語のみ。時々接続が切れていることがあった)、便利である。

向こう数日の天気は良さそうなのでとりあえず予定通り木曜にヘルンリ小屋に上がり、金曜に頂上を狙うことにする。ということでヘルンリ小屋に予約を入れなくては。しかし、コインが使える公衆電話がない、ということで、相方が山岳センターで借りましょう、というので、山岳センターで天気予報を聞きがてら電話を借りれるか聞くことにする。
「こないだのお姉さんやったら嫌やなぁ。絶対断われるよなぁ。」と言いつつ行くと、あのお姉さんがいた。もう1人いて、2人共電話をしている。もう1人のお姉さんに当たらないかと待っていたが、先日のお姉さんが先に電話をおいて声をかけてきた。仕方ないので、かくかくしかじかと説明すると「あらそう。じゃ、私がかけてあげるわ。今日はそんなに忙しくないから!」と言ってヘルンリ小屋に電話をかけてくれた。

なんだ、電話、かけてくれんやん。しかも、そんなに忙しくないから、って言うけどこないだもそんなに忙しそうじゃなかったよな、と2人でぼそぼそ話をする。すると電話を切ったお姉さんから驚愕の一言が。「金曜はね、天気悪そうなの。だから、もし金曜に上がらない、小屋に泊まる必要がない、と思ったら水曜の夕方までに連絡してね。」

え?金曜雨?観光センターの予報では晴れマークが並んでいたのに。

とりあえず、OKとThank youを言って山岳センターを出た。
不安がよぎる。金曜天気悪いって...。

斜面の顕著な線がトレース

頂上で。このあたりはかなり調子よかったのだが...
リスカム、モンテローザ方向
綺麗にトレースがついている
M.G.P.からの帰りのロープウェイの中から
写真を撮れるだけまだなんとか大丈夫だった

2012年9月1日土曜日

マッターホルン登山その2

2012年8月12日(日) 晴れ
2日目。

朝早くに目が覚めた。また寝ようと思っても寝付かれないので起きて腹筋を始めた。窓から外を見るとちょうど日が上がったところで、目の前のお家がとってもかわいくて写真を撮る。あぁ、外国に来たんだわ、と改めてわくわくする。

ホテルで朝食を食べると、食べ放題の朝食といえども1人18CHF。うぅん、高いな。ということで、チェックアウトしてKlotenという最寄り駅に向かう。日曜の8時前だからか人通りは少なく、街はまだ静か。駅に併設されている(改札がないのでいつの間にかプラットフォーム、その横にキオスクのようなお店が併設されているという感じ)お店に入り飲み物、パン、スナックを買う。パンが私の好きな硬いパンでもぉ、これだけで大興奮。

8時半前の電車に乗りツェルマットへ向かう。KlotenからZurich HB(チューリッヒ中央駅)、Visp、Zermattという乗換順。Vispからは登山電車になる。出発時間をゆうに15分は過ぎて出発。あぁ、ここは日本とちゃうかった。ゆっくり行っていいのだ。久しぶりの景色に懐かしいような、改めて景色を楽しむ余裕があって新鮮さもある。

12時過ぎにツェルマットに到着。観光地だけあって人が多い。アパートは14時にチェックインだがこのまま行くと少々早く着いてしまう。どうしようか迷ったがとにかく荷物が大きいのと重いのでとりあえずアパートに向かった。半時間ほど早く着いたが、アパートは綺麗に掃除されて用意されていた。ご飯を食べるテーブルと居間のソファの前のテーブルの上に薔薇の花が一輪挿しにさされて飾られていて、テーブルの上にはワインも1本置いてあった。Heart warmingなはからいに嬉しくなる。

荷物を置き、山岳センターに天気予報チェックに向かう。ついでに食材の買い出しも。
メインストリートでは人が集まっていて何かを待っている様子。そういえば、Vispからの電車にも楽器が積まれてて鼓笛隊のような制服を着た人達が乗っていたな。何が始まるのか、と思いつつ駅の方に向かって歩くと、農業、酪農、騎士、貴族、などの中世の服を着た人達がパレードで進んできた。アメリカでいう感謝祭のようなものかな?カウベルをからんからんと鳴らしたり、アルプホルンを吹いて担いでいる人とか。予期していなかったのでちょっと得した気分。

山岳センターに着き、向こう1週間の天気を聞く。ついでにホルンリ小屋の番号を聞く。向こう1週間の天気は木曜がなんだか悪いようで後は全ていい、とのこと。木曜はアタック予定日。うぅん、でも4日向こうだからなぁ、変わる可能性はある。小屋には自分で電話をして予約しろ、とのこと。自分の携帯持ってるけどなるべくなら使いたくないので公衆電話を探すことにする。

その前に駅前のCOOPに行って食料買い出し。当初は、2人分の食事を変わり交代で作り、食材も割り勘にしようということだったのでこの日はそのつもりで買うが、結局自分が消費するものなどと割り勘がややこしくなり、後日、それぞれ好きなもの、必要なものを買う、ということにした。この方が食べる量、好みが違うとなおさらいい。私と相方の場合は、そんなに食べ物の趣味が違わなかったのでよかったが。(酒好き、ハム好き、においのきついチーズ好き、パン好き、野菜好き、という。どこ行っても暇さえあれば飲んでいた。)

電話を探すも、どれもプリペイドカード式のものばかりで、ヘルンリ小屋にかけるだけの用でカードを買うのももったいないので、この日は諦めた。

次の日の月曜は、ハイキングの予定だったがアタック予定日の天気が悪いと言うことで、相方がいきなり高度順応でブライトホルンに行こう、と言い出した。彼女の方が私よりも高度に強いのでそう言い出したのだろうが、私としてはできればハイキングをしてから高度順応、そしてアタック、という出発前に決めた計画を変えたくなかったのだが、天気も気になる。しかし、それよりもやはり体力面で弱点がある自分がリーダーという、どこかしらずっと気になっていたマイナス面がここで問題となって表面化。計画通りに行きたい、と言いたいと思いつつ、彼女の自信満々な顔、強気の言い方に押された形で、次の日、ブライトホルン(4164m)に登ることになった。

夜中にふと目が覚め、自分の押しの弱さや私が高度に弱いのを分かっているのに計画を変更しようとする彼女の言動に妙にむかむかしてきて、そこから朝までよく眠れなかった。

チューリッヒ空港近くのホテル前のお家
色使いがとてもかわいい






















同じくチューリッヒのホテルの窓から見た東の空
新しい朝が来た〜、って感じ

ツェルマットのお祭り
重たいので最初に吹いてから持ち上げて行進


ツェルマットのアパート
スタジオタイプ、いわゆるワンルームです








何とかの車窓から、ではないですが
Vispに向かう電車の中から
ベルナー・オーバーラント山群かな?