2019年2月23日土曜日

阿弥陀北西稜 番外編

すでに先々週の話になってしまった阿弥陀北西稜山行。時間が経つのははやいもので。2月も5日ほどで終わりです。

さて、その阿弥陀岳北西稜の山行の番外編「危なっかしい人」編です。
登った当日、私たちの他に3人パーティさんがいたことは書きましたが、実はもう1組いました。単独の男性でしたが、小ピークまで一番最後を登ってきていた人で、単独の人がいるなんて話が後続の3人パーティさんが話をしているのは聞こえていたのですが、天気下り坂、寒くなってくるわ、ちょっともたついてしまっているわ、などと目の前のことを考えていてあまり気にしてませんでした。
岩壁に着き、私が1ピッチ目を登り始めた頃、「先に行ってもらおうか?」なんて声が聞こえてきたのですが、すぐ後ろにいたわけではないので私がとりあえず先行しました。岩の基部をトラバースするように歩き雪壁を登り初めて「うわぁ、こっからどう登ろうか」と考えている時、ふと足元を見たらヘルメットに小型カメラを乗っけた人が見えてびっくり。それでもって登ってこようとしているので、もし私が落ちたらまともに彼の上に落ちる状態だったのと、「単独の人=すごく登れる人=速い人」というのが岩登りの世界ではなんとなく共通意識だと思っている私は「先に行きますか?」と声をかけて一旦下りた。

10年ほど前だったかな。GW山行で鹿島槍ヶ岳の東尾根に行った時、岩登り(北西稜よりやや難度上)の部分を単独の人が、テント装備背負ってすすすす〜っと登って行ったのが記憶に残っており、その時、順番待ちしていたほぼ全パーティが「単独の人は速いので先に行かせてあげて」という伝達ゲームをしていた。なので単独で岩稜を、しかも積雪期に、ましてやまぁまぁ悪い天気の日に登りに来るってすごい人だと思っていたのでしたが...。
登り始めるとどこを行けばいいんでしょうか?的な質問をされるし、前回のページでも書いたように私はトポと違うライン取りをしていたので、そのラインと同じライン取りをされても、と思いながら、
「そのラインはどうかなぁと思ってるんです」とアドバイス的なことを言いました。
そのうち、ふと「私、この立ち位置やばい」と思い、少し岩の陰に隠れるように動いた直後、1本のアイスアックス(ピッケル)だけで支えていた彼、両足のクランポン(アイゼン)の前爪のひっかかりが外れてぐらっと体が揺れたのでした。「うわっ」と思った瞬間、アイスアックスを掴みなんとか態勢を立て直したので落ちることはなかったのですが...。

そしたら「やっぱり下ります」と言って私のロープとランニングのスリングを掴んで下り(仕方ないので使わせた)、岩の基部を戻って行きました。

この後、1Pを終了してハズが登ってきて3人パーティさんも登ってこられたので先ほどの単独の人はどうしたのか聞くと、この岩稜帯の左側を登れるはずだと言って登っていった、というのです。
おっとと。ひょっとして北稜=行者小屋から登るルートでビギナーのステップアップルートと間違えているのではないかい?なんでも南稜と中央稜は登ったことがある、とか言ってたらしいが、登りを見ている限りクライミングの技量を含め、積雪期の経験がそんなにあるとは思えない。

この後、そんなにひどくはならなかったが天気は下り坂、視界もだいぶ悪くなりましたがどうしたんでしょうかね。

一人で来るもよし、力試しもよしですが、も少し自分の技量を見極めるというのも大事じゃなかろうか、と思った出来事でした。

2008年5月4日 鹿島槍ヶ岳東尾根の第2岩峰を登る単独の人(写真真ん中あたり)
この後の核心部(左側の岩壁)もフリーソロで難なくこなした

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今日は風は強いですが、日が当たると少しぽかぽか。
2週間前、凍りついていた草木も今日はほんわかしてるんだろーなー