2021年3月2日火曜日

昔日山行話 2007年5月 剱岳小窓尾根

今回は2007年5月GW。剱岳の小窓尾根。

この山行は、山岳会内で2つのチームに分かれての山行。チーム早月尾根とチーム小窓尾根。私は、先輩Mさん(リーダー)とH君と3人で小窓尾根へ。ちなみに早月尾根にはうちの父ちゃんが岳友参加。

5月3日 晴
6時40分 馬場島 7時30分 白萩川取水口 8時30分 池ノ谷分岐点 8時40分 雷岩 
14時00分 2121m 15時00分 幕営

馬場島から白萩沢沿いに進み、とある場所で巻道へ入る。H君は巻きに反対で渡渉して進むことを主張していた。沢に雪はほとんどなく渡渉するような状況じゃなかった記憶がある。が、記録を読み返してみると、この高巻きルートはしっかりした登山道もどきで、冒険心がそがれた、と書いてある。



雷岩から小窓尾根に取り付く(↑)藪漕ぎ、雪なし、天気よし。でも暑い。

暑さと藪と格闘後、2100m地点に着いた。少し掘ると笹が出てくる場所だった。テントが笹で滑ったらどうしよう、と心配しながら寝たのを思い出す。

富山湾に沈む夕日


5/4 晴
3時00分 起床 5時00分 2121m出発 6時30分 ニードル 7時20分 ドーム 9時05分 マッチ箱 11時00分 小窓ノ頭手前ピーク 12時10分頃滑落 14時00分 三ノ窓 15時 池ノ谷乗越

天気がいいがルート上、日陰に入ると肌寒い。暖かい飲み物を持っていたが少し冷めていて飲んでも体が温まらなかった。
順調に高度をあげていく。他にもパーティがいるのでなんとなく心強い。協力協定を結んでいるK山岳会の人たちもいてさらに心強い。
人が多いということは順番待ちがある、ということ。ロープを出して登るところなんかは特にそうだ。けど待つしかない。この日もとあるところでH君が、ルートを外れ広い大きな雪璧を登ろう、と言い出した。却下したけど。

朝いち、小窓ノ頭へ向かう。まずはくだって、その後登って、の繰り返し

多分、マッチ箱の通過

マッチ箱通過後も、上ったり下りたり、を繰り返す

右手を見ると早月尾根が見え、登っているパーティが見える。まっすぐな稜線が頂上へ伸びている。
こちらは複雑な稜線を右へ左へ、上へ下へと進む。

小窓ノ王の基部に到着したのは12時ごろ。通常ここは2〜3ピッチほどの懸垂下降をする。その後少し登り返して三ノ窓に着く。懸垂下降の順番待ちが発生するところ。待つしかないだろう。でもH君は、ロープなしで行こうと言う。私はどうも気持ちが悪いのでロープを出したい、と言う。リーダーはなんかもごもご言っていた。H君はとても登れる人だった。自信のある人だった。なのでフリーで行けると思ったのだろう。でも私にはそんな自信はなかった。念には念を入れたかった。リーダーがどう考えてるかは不明だった。結論が出る前にH君はスタタと下りていった。続いてリーダーが下り始めた。ちょっとラインが違うような、と思っていると前爪を乗せた石(岩)がぽろっとはがれた、と記憶している。あっという間に右にカーブしている谷へ滑って彼女が見えなくなった。
ただ「滑落停止〜!」と数回叫んだ。彼女もなんとか停止させようとしているのが見えたが、する〜っと滑っていってしまった。
三ノ窓の手前まで進んでいたH君がザックを下ろし、迎えに行ってくると下りていった。多分、H君のいた場所からリーダーが停止したのが見えていたのだろう。私はK山岳会のロープを借りて懸垂して三ノ窓の基部まで行った。

三ノ窓からみた小窓ノ王基部からの斜面。懸垂している人が見える。

怪我なくリーダーが登り返してきた。よかった。気持ちを落ち着かせてから池ノ谷ガリーを登ったところで時間切れ。池ノ谷乗越でテントを張った。

午後5時頃だったか県警のヘリが飛んできた。乗越にいるのでちょうど目線の高さを、誰かを探すように飛んでいた。どうしたんだろう?なんて話をしながらテントの中から様子を伺っていた。
7時のニュースで、この付近で「男性」が滑落した様子、と流れた。県警が出動したが見つからず「男性」はおそらく無事で、仲間との登山を続けた模様、と言っていた。落ちたリーダーは女性だが、内容からまさに私たちのことじゃないか?えらいおおごとになってしまった。

5月5日 晴
3時00分 起床 5時10分 出発 5時40分 長次郎ノコル 6時40分 剣岳頂上
10時10分 早月小屋 13時15分 馬場島

この日も天気よく朝から快晴。
順調に歩き、雪壁もいくつかこなし頂上へ到着。
頂上への最後の登り

早月小屋までまだまだ。気をゆるめないよう進む。
小屋が見えるところまで来た。早月チームが待っていてくれた。

この後、前日のことの顛末を会長に説明。県警が出動したのはリーダーが落ちた時、付近にいた人が110番してくれのだろう、と推測。なにはともあれ怪我がなくてよかった、という話に落ち着いた。とはいえ、県警が出動するような状態になったのはやはり反省すべきと怒られた。
この直後、早月チームの1人が「警察に通報なんて、余計なことをする人がいたものね」と言った。「余計なことじゃないでしょ?心配して110番してくれた人の親切に対してそういうことを言うもんじゃない。」といさめた。

同じ山岳会に所属していても、意見の食い違いはある。それでも互いが瞬時に納得できるような信頼関係のある人を見つけるのは難しい、と感じた山行だった。
合わないと感じる人との山行は、自分が我慢できる性格でないと難しい。
私は基本的に我慢が足りない人。